• エラガバルス帝&ユリア・マエサ/セラピス神
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 セウェルス朝時代の古代ローマ帝国で発行されたペンタサリオン銅貨。このコインは下モエシア属州(現在のブルガリア)で発行され、現地で流通していたものです。当時の下モエシア属州総督 ユリウス・アントニウス・セレウコスによって発行されました。

 表面には当時のローマ皇帝エラガバルス(ヘリオガバルス)と、祖母のユリア・マエサが向かい合う姿で表現されています。
 エラガバルス帝(ヘリオガバルス帝 在位:AD218年~AD222年)ははもともとシリアの太陽神エル・ガバルの神殿で司祭長を務めていましたが、ローマ中枢政治への復帰を狙う祖母ユリア・マエサによって皇帝に担ぎ出され、14歳の若さで即位しました。当時のローマでは、女性の政治参加は認められていませんでしたが、セウェルス朝時代には息子や孫を皇帝に仕立てることで、実権を握ろうとする祖母や母親が多く出現しました。

 エラガバルス帝は即位時に少年だったこともあり、政治の実権は祖母ユリア・マエサと母親ユリア・ソエミアによって握られていました。しかし、エラガバルス帝はエル・ガバル神を最高神として崇めた他、豪奢な宮廷生活と異常なまでに乱れた性生活が噂され、ローマ市民と軍の支持を失いました。

 当時のローマでも、誰が実権を握っているかは知られていたと思われ、ユリア・マエサやユリア・ソエミアを表現したコインが数多く発行されています。首都ローマから遠く離れた属州都市マルキアノポリスでも、皇帝と祖母の姿を並べたコインを発行し、誰が統治者であるかを知らしめていました。
 伝統的に、マルキアノポリスで発行されたコインには、二人の人物を向かい合せて並べた大胆なデザインが踏襲され、本国ローマでは見られないコインが造られています。当時の政治的にも、大変野心的な表現です。


 

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