表面には月と狩猟の女神ダイアナの胸像が表現されています。動きやすいように髪を束ねた女神の肩には、狩猟で使う弓矢筒がかけられています。ダイアナ女神はギリシャ神話のアルテミス女神と同一視され、日中は山野を駆け巡り狩りを行う、活発で健康的な女神として表現されています。
　裏面には、大きな岩の上に立つ牡牛と神官が表現されています。トーガを身に纏った神官は火の点いた灯火台に手をかざしています。これは儀式の様子を再現したものと考えられ、隣の牡牛は犠牲獣とみられます。

　コイン周囲の縁部分に付けられた無数の切り込みは「Serratus(セラトゥス)」と呼ばれ、ラテン語で「ギザ」を意味します。この切り込みは、コインの変造(削り取り)及び偽造(メッキ加工)を防止するために付けられたと考えられています。

　全体の打ち出しのバランス、また保存状態も大変良く、トーン(経年変色)の具合も美しい一枚です。