軍人皇帝時代、ガリエヌス帝の治世に発行された小型銅貨。このコインはローマ帝国の属州の一つ、アシア属州の都市アレクサンドリア・トロアスで造られました。アシア属州は小アジア西部、現在のトルコ西部にあたります。
トロアスのアレクサンドリアは、かつてトロイがあった地域にアレキサンダー大王(マケドニア王 アレクサンドロス3世)が建設した都市です。現在はダルヤンと呼ばれる地域、ダーダネルス海峡の付近にBC334年頃に建設され、「アレクサンドリア・トロアス」と称されていました。
コインの裏面には、ローマ建国神話に登場する重要な一場面、
幼きロムルスとレムスに乳を与える雌狼が表現されています。テヴェレ川から流れ着いた幼い双子を助けたのは、近くを通りかかった一匹の雌狼でした。
この有名なモティーフはローマ本国をはじめ、帝政時代は属州で発行されたコインにも盛んに採用されました。ローマ本国から遠く離れた地域であっても、ローマ帝国の支配力を誇示する必要があったのかもしれません。特に小アジア西部の都市で発行された銅貨の裏面には、このモティーフを取り入れたものが多く発見・確認されています。