4世紀、コンスタンティヌス大帝 (正帝在位:AD312年~AD337年)の時代に造られた小型のフォリス貨。このコインはゲルマニア地方の植民都市 アウグスタ・トレヴェロールム(トリーア)で造られました。
同タイプの小型銅貨は、
コンスタンティヌス大帝による新都コンスタンティノポリス建設を記念したものとされ、新都が建設されたAD330年から大帝が崩御するAD337年にかけて、ローマ帝国内の各主要都市で多く発行されました。
表面には、兜を被った
守護女神 ローマの胸像が打ち出されています。左右には
「VRBS ROMA (都市ローマ)」の銘が確認できます。
裏面には、
ローマ建国神話に登場する雌狼と、その母乳を飲むロムルス&レムス兄弟が刻まれてます。上部には二つの星が刻まれており、夜中の情景であることを示しています。
ロムルスはローマ建国者として知られ、またローマの伝説上の初代王として都市名の由来にもなりました。ロムルスとレムスは軍神マルスとラティウムの王女の間に生まれた双子の兄弟とされます。しかしその後、王位を簒奪したアムリウスによってテヴェレ川に流されました。そして岸に流れ着いたとき、一匹の雌狼が現われ、この幼い双子に自らの母乳を与えて飢えをしのがせたと伝えられています。
この伝説はローマ建国の象徴的エピソードとして広く知られ、後の時代を通してローマの礎であり起源、または象徴として捉えられてきました。このコインが発行された時代、既に帝国の中心都市は新たな都市へ分散され、都市ローマの重要性は低下していました。しかしこのモティーフはローマ人の精神的原点として、コインやレリーフに表現され続けたのです。