五賢帝コイン特集

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かつて、地中海全域を中心とした広大な版図を統治したローマ帝国は、世界史上稀に見る大帝国として記録されています。
特に紀元2世紀の100年間は帝国の最盛期であり、優れた皇帝が立て続けに五代も続いたことから「五賢帝時代」と称されています。
その五人の皇帝たち(ネルヴァ、トラヤヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウス、マルクス・アウレリウス)はそれぞれ親子関係になく、優れた人物を養子として後継にしたことも、繁栄の時代が長く続いた礎と考えられています。

パクス・ロマーナ(ローマによる平和)の最盛を実現させた、偉大な皇帝達のコインをご紹介します。
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ドミティアヌス帝暗殺後、元老院内の推挙によって皇帝に選出されたのは経験豊富なネルヴァだった。

皇帝即位時は既に老齢であったが、高潔な人柄によって多くの元老院議員に信頼され、その態度は即位後も変わることはなかった。
AD97年、文武共に名高かったトラヤヌスを養子に迎え後継とした。ネルヴァの治世は1年半にも満たなかったが、確実な後継者を決定したことから五賢帝の一人に数えられた。

コインの肖像や彫像では細身で首が長く、鷲鼻が特徴的に表現されている。
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トラヤヌスは文武に優れた人物として軍の絶大な支持を集めていた。
即位後も軍を率いて辺境の戦場に赴き、兵士を鼓舞して数々の勝利をもたらした。
積極的な領土拡大策を推進したトラヤヌス帝はダキア王国やナバテア王国、アルメニア~メソポタミアに至る広大な地域を征服した。そのため彼の治世中、ローマ帝国の版図は史上最大となった。

トラヤヌス帝は「最良の君主」という尊称を授かるほど評価が高い皇帝として、後のローマ皇帝たちも彼にあやかろうとしたほどであった。
コインの肖像では、治世の後期にかけて盛んに逞しい胸像が打ち出されるようになった。
またダキア戦争の時期には、裏面に捕虜となったダキア人や戦勝トロフィーのモティーフが頻繁に刻まれた。
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トラヤヌスの後継者となったハドリアヌスはギリシャ文化を愛し、詩や美術に造詣が深い人物だった。
その影響からローマ皇帝として初めて頬髯を蓄えたことでも知られる。
政治姿勢は現実主義的であり、トラヤヌス帝の政策によって急拡大した領土の放棄と国境不拡大方針の確立などの大胆な転換を行った。また、北はブリタニアから南はエジプトまで自ら視察に赴いた ことから「旅する皇帝」ともいわれる。

近年日本では映画化された漫画『テルマエ・ロマエ』に登場したことで、その名が広く知られるようになった。
コインの肖像では、常に豊かな頬髯とカールさせた頭髪が表現されている。
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帝位を継承したアントニヌスは、元老院を尊重し他者の意見や考えに耳を傾ける人物だった。
帝号にある「ピウス(PIVS)」「敬虔」を意味し、平和と安寧をもたらした皇帝を象徴する称号である。
彼の治世は五賢帝の中で最長となり、その間のローマ帝国は平和と繁栄を謳歌した。
国内外情勢が安定し、また皇帝自身の人柄も申し分ないことから、歴史家から「歴史無き皇帝」ともいわれる。

映画化された『テルマエ・ロマエ』では、ハドリアヌスを補佐する人格者として登場した。
また、コインの肖像は面長の垂れ眉が特徴的である。
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幼い頃より秀才と云われたマルクス・アウレリウスはハドリアヌス帝に気に入られ、アントニヌス・ピウス帝の養子として10代で「副帝」の地位を授けられた。
即位にあたっては義弟のルキウス・ウェルスを共同皇帝として、権力の分立を図った。

ストア哲学に深く傾倒し、常に自らを制御して理想の君主像を追求したマルクス・アウレリウスは「哲人皇帝」と讃えられた。彼の日々の内省をまとめた『自省録』は、現代に至るまで哲学の名著として読まれ続けている。 尚、漫画版『テルマエ・ロマエ』では聡明な少年として登場している。
コインの肖像では豊かな巻毛と大きな瞳、高い鼻筋が特徴である。
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