1st officina

　「背教者ユリアヌス」の異名で知られたローマ皇帝　ユリアヌス帝(在位：AD361年～AD363年)の治世下で発行された大型銅貨。表面には、哲学者風の山羊顎鬚を蓄えたユリアヌス帝の肖像が表現されています。

　裏面には二つの星の下に立つ牡牛の姿が表現されています。このモティーフは後世のキリスト教徒によって、ユリアヌスのギリシャ神話信仰と、それに伴う神々への生物供養を示していると考えられました。牡牛は古代ペルシアを発祥とするゾロアスター教の時代から、古代宗教の世界では代表的な「犠牲獣」であった為です。またある歴史学者は、ユリアヌス帝が牡牛座の下に生まれたことを表しているとも考えました。
　しかし、当時の史料は乏しく立証が困難であることから、それらの説はあくまで憶測の域を出ず、真相は未だ謎に包まれています。
　下部には、鋳造都市である帝都コンスタンティノポリスを示す銘が刻まれており、末尾の「A」はコンスタンティノポリス第一造幣所を示しています。牡牛の上部にはラテン語で、「国家の安全」という銘文が刻まれています。