紀元前4世紀末、アレキサンダー大王が征服したメソポタミア地方の古代都市バビロンで発行されたテトラドラクマ銀貨。当時のドラクマ銀貨一枚は、歩兵の一日あたりの給与(*騎兵は2ドラクマ)に相当したとされ、4ドラクマの価値に相当するこの銀貨は主に交易などの高額決済で使用されていました。

　表面には獅子の毛皮を被り、神話の英雄ヘラクレスに扮したアレキサンダー大王(アレクサンドロス3世)の横顔肖像が打ち出されています。伝承によればヘラクレスは歴代マケドニア王家の祖先とされ、アレキサンダー大王自身もヘラクレスを理想の英雄としていました。コインにはそのヘラクレスのイメージに重ね合わせた、大王の逞しい姿が表現されています。

　裏面には、玉座に腰掛ける大神ゼウスが表現されています。ゼウス神は下半身を「ヒマティオン」と呼ばれる衣で覆い、左手には王笏、右手には聖鳥である大鷲を載せています。右側にはアレキサンダーの名を示す「ΑΛΕΞΑΝΔΡΟΥ」銘が確認できます。