アントニニアヌスは名目上デナリウス銀貨二枚の価値に相当するコインでしたが、銀はほとんど含まれていませんでした。このコインでは銅色の下地が現れていることから、銅素材に銀メッキを施していたようです。

　クラウディウス・ゴティクス(在位:AD268-AD270)は軍人出身の皇帝であり、即位後は北方から侵入したゴート人と戦ってこれを打ち破ったことから「ゴティクス(=ゴート征服将軍)」の尊称を授かりました。

　厳粛なクラウディウス・ゴティクスは軍規律を重んじていたため、軍団の結束と戦意を削ぐという理由で兵士の婚姻を禁じ、密かに結婚式を執り行っていた司祭ウァレンティヌスを処刑したという伝承が生まれました。後世には恋人たちの守護聖人とされたウァレンティヌスの命日である2月14日が「バレンタインデー」として広く知られるようになりました。

　聖ウァレンティヌスの殉教に関する伝承は不確かな部分が多く、同名複数の司教の物語が組み合わさって創作されたと考えられています。またクラウディウス・ゴティクスが兵士たちの結婚を禁じた措置や、キリスト教徒に対する迫害などは明確な記録が無く、伝承の域を出ていません。