1世紀末、フラウィウス朝時代の古代ローマ帝国で発行されたデナリウス銀貨。全体に濃いトーンがかかり、美しい雰囲気を残しています。

　表面には月桂冠を戴くドミティアヌス帝(在位:AD81年～AD96年)の横顔肖像が打ち出されています。即位当初のドミティアヌスは大衆の支持を得られるような善政を心がけたとされますが、自身の暗殺計画が発覚して以降、常に暗殺の脅威に怯え、疑心暗鬼を募らせるようになったと云われています。またローマ市内に現存する円形闘技場「コロッセオ(フラウィウス円形闘技場)」は、ドミティアヌス帝の時代に完成しました。

　裏面には知恵と戦術を司る女神 ミネルヴァ女神が表現されています。ガレー船の上に立ち、槍と円盾を構えて武装した勇ましい姿で表現され、足下には女神の聖鳥であるフクロウが確認できます。ドミティアヌス帝の治世に発行されたコインの裏面には共通してミネルヴァが表現されていることから、皇帝が特に信奉していた神だったとみられます。