紀元前2世紀の古代ローマで発行されたデナリウス銀貨。表面には、双顔の神ヤヌスの肖像が打ち出されています。ヤヌス神の歴史は古く、ローマ古来の神でした。古代ローマではヤヌス神を「出入口」を守護する神として、家や公共施設などの建物の門の上にレリーフを飾ったとされます。
　また、転じて「始まりから終わりまでを司る神」と認識されたことで、年末年始には年神様として供え物を行ったと伝えられます。王政時代、一年の最初の月を「ヤヌスの月」と定めたことにより、「ヤヌス月」=「January (一月)」が定着し、現代までその名が引き継がれています。

　 　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　双顔神ヤヌス

　ヤヌス神はローマ国家にとって特に重要な神のひとつでした。ローマ市内にはヤヌス神を祀る「ヤヌス神殿」が建立され、ローマが戦時体制にあるときは開き、逆に扉が閉じられている時は平穏が訪れていることを表しました。

　裏面には戦勝トロフィーに月桂冠を捧げるローマ神が表現されています。この裏面は明瞭に打ち出されており、右端にはローマを示す「ROMA」の銘が刻まれています。

　両面共に打ち出し、保存状態が良好であり、全体のトーンのかかり具合から大切に保存されていたことが分かります。収蔵にはオススメの一枚です。