ローマ共和政時代の末、第二回三頭政治の時期に発行されたデナリウス銀貨。このコインはオクタヴィアヌスと、マルクス・アントニウス＆クレオパトラ連合軍との戦いが行われた、BC32年の秋頃からBC31年の夏頃にかけて造られました。

　オクタヴィアヌスはエジプトの女王クレオパトラのもとにいる政敵マルクス・アントニウスを打倒するため、元老院とローマ市民を反アントニウス・反クレオパトラの傾向にまとめ、戦いを開始しました。BC31年9月に行われたアクティウムの海戦によって決定的な勝利を手にしたオクタヴィアヌスは、マルクス・アントニウスとクレオパトラを滅ぼし、エジプトと独裁的な権力を手にしました。後に彼は「アウグストゥス(尊厳者)」の称号を贈られ、ローマ帝国の初代皇帝となったのです。

　コインの表面には若々しいオクタヴィアヌスの肖像が打ち出されています。このコインが発行された時期、彼は30代はじめでした。後に皇帝となった後に発行されたコインの肖像も、変わらず若いままであり続けました。
　裏面には、竪琴を奏でる芸術の光明神アポロの坐像が表現されています。岩の上に座ったアポロ神は首に紐付き帽子をかけ、足を交差させて座っています。左右には、カエサルの正統な後継者たるオクタヴィアヌスを示す、「CAESAR DIVI F」の銘が刻まれています。